ピントの合っていない状態を、呆け（ボケ）るとかボケているという。写真全体が呆けているピンぼけという言葉があるが、ここでいうボケは写真全体が呆けているわけではない。

　かつてはパンフォーカスといって手前から遠方まで、隅から隅までピントの合っている写真を良しとした。しかし、最近では、被写体の１点にのみピントを合わせ、その前後はピントの合っていない、いわば呆けている写真を良しとする傾向が生じてきた。

　絞りを開いて被写界深度を浅くして、被写体の狙った部分にのみピントを合わせ、それ以外の部分にピントを合わせない。また望遠レンズを使って、狙った被写体のみにピントを合わせるなどの方法により、一部のみにピントを合わせる写真表現の技術である。

　被写体の一部にしかピントが合っていないので、写真を見る人は狙いにのみ視点が集中することになる。また、全体に柔らかい画面になるので、被写体の特性を充分に引き出すことができる。